目次
油絵を描いてみたい
油絵と聞くと厚塗りで重厚感のある絵
有名な絵は殆どが油絵
絵を描く上で最高の技法
といったイメージを持っている方は
多いのではないでしょうか。
「油絵を描いてみたいけれど難しそう、
どんな道具が必要なのかわからない」
「始めてみたいけれど
なかなか手を出せないまま…」
こんな思いをされている方もいるかも
しれませんね。
たしかに油絵は、揃える道具類が
いろいろありますので、
そういった意味では面倒かもしれません。
でも油絵は、失敗しても描き直したり
重ねて塗ることもできますので、
初心者の方でも描きやすい画材ともいえます。
この記事では
油絵の技法と、油絵を描くために
必要な画材と使い方
初心者におすすめの絵の具など
私が実際に使っているものを紹介しながら
解説してゆきます。
スクールに行って絵の先生に習う方や
独学で描いてみる!という方にも
油絵の具のことを知って
お役立てしていただければ幸いです。
油絵具の特徴について
はじめに、油絵具の特徴を解説します。
油絵具の大きな特徴は、
乾燥するまでに時間がかかることです。
水彩絵具やアクリル絵の具は
水分が蒸発して乾燥すれば
どんどん描き進められますが
油絵具は乾くのが遅いため、
完成までにある程度の時間が必要になります。
描いては乾かし、また描いて乾かす…
という作業を繰り返すため、
油絵を描く作家の多くは、
乾燥時間を無駄にしないよう
複数の絵を同時進行で描いています。
油絵の具は、乾燥が遅いという特性から、
ぼかしやグラデーションを描くのに向いています。
油絵具を購入しよう!気になるお値段は?
「絵具は初めに何色を買ったらいいの?」
「この色は買うべき!っていう色は?」
こんな風に悩んだら
いろんな色がバランスよく入っている
基本色セットがおすすめです。
最初は10~12色のセットを用意して、
後から欲しい色を買い足していきましょう。
お値段は¥2000~4000円くらいです。
セットで購入するのも良いのですが
基本の3原色赤 青 黄 + 黒 白
だけを買うのも面白いと思います。
それぞれの色名は
赤=カドミウムレッド
青=ウルトラマリンブルー
黄色=カドミウムイエロー
黒=ピーチブラック or アイボリーブラック
白=チタニウムホワイト
これらを混色することによって、
ほとんどの色は再現することができるので
どんな絵でも描くことができます。
自分で色を作ることは
色相、明度、彩度、混色の知識
の勉強にもなりますよ。
色彩の基礎について解説した記事もご覧ください。
絵の具は 日本国内と海外のメーカーから
製造、販売されています。
私が持っている絵の具では、
日本のメーカーさんの
ホルベイン、クサカベ、
マツダ ターナーなど。
海外では
ウィンザー&ニュートン(イギリス)
レンブラント(オランダ)
こうしたメーカーさんでは
いろいろなブランド絵の具を販売しています。
価格は、色やブランドによって違いがあります。
色によっての差異は、
顔料=希少性 ですので
使用されている顔料によってランクがあります。
天然の鉱物、金属や水銀が使われている絵具は
びっくりするほど高価です。
どこの画材やさんにも
絵の具のランクを表示した一覧がありますので
それが参考になりますよ。
また、絵の具の色名の後にHUE(ヒュー)
という言葉がつくものは安値です。
HUEとは似せて作る という意味合いがあって
他の顔料を使用して元の色に近づけて造られています。
本物には劣らない発色なので、
私も大作によく使っています。
絵具によっては、内容量が少ない
小さめサイズもありますので
使う頻度によって購入するとよいでしょう。
油絵を描くために必要な道具
絵の具を買う時に、
一緒に揃えると良い道具類を見てゆきましょう。
- 木製パレット
木製パレットは使い終わった絵の具を
拭き取れば何度でも使えます。
- ペーパーパレット
一枚毎に切り離して処分できます。
S M L 穴あり、無しなどいろいろなタイプがあります。
- 筆
弾力のある豚毛の筆が基本です。
平筆 丸筆 細い太いなどいろいろな形があります。
また同じ豚毛でも硬いものと柔らかいものがあります。
豚毛の筆のほかに水彩画用のアクリル筆や
面相筆なども使います。
- ナイフ
金属製とプラスチック制の物があります。
形もいろいろなのでお好みのものを
2、3本用意すると良いでしょう。
- 絵皿
溶き油を入れます。
一度出したオイルはその日のうちに
使いきるようにしたいところですが、
余ってしまったらラップをして保管しましょう。
(揮発性してしまうので)
絵皿ではなく、油壷でもよいでしょう。
油壷はクリップ式になっているのでパレットに
取り付けて使用できます。
屋外での制作での持ち運びにも安心です。
- ブラシクリーナー
油絵用のクリーナーで筆洗い液と筆洗器が
一緒になっている商品があります。
クリーナーの下の方に
油絵の具が沈殿する仕組みになっています。筆を洗う時に気を付けることは
まず、筆に残った絵の具を
ティッシュや新聞紙などでよくふき取って
それから直接容器に入れてすすぎます。
その後、中性洗剤(台所用のものとか)で洗っておくと
筆先の傷みも軽減されて長持ちします。筆は消耗品ではありますが
好きなだけ購入する訳にはいきませんから
できるだけ大切に、と心がけています。
- 支持体と地塗り剤
これは絵の具を支える材料のこと
つまりキャンバスや板、紙などです。
油絵具を支えるものとしては
キャンバス、木製パネルが適しています。
支持体が決まったら地塗りを施します。
地塗りはとても重要な工程です。
地塗りについてはこちらの記事
支持体についてはこちらの記事
で詳しく解説していますので
よろしければご覧ください♪
油絵具の使い方
油絵具で絵を描くには
絵具に溶き油を加えて使います。
絵の具自体にも既にオイルは練りこまれていますが
足りない分を補うために
溶き油を使用します。
溶き油には、主に使うものでは以下の物があります。
・揮発性油⇒テレピン ペトロール
・乾性油⇒リンシード スタンド ポピー
・樹脂⇒ダンマル
私はいつもテレピン+リンシードまたはポピー
を混ぜて使っています。
多くのプロの画家は、これらのオイル類を
使いやすいように自分で調合していると思います。
この他の商品では、
ペインティグオイルがあります。
これは、何種類かのオイルと樹脂を混ぜたもので
調合溶き油になります。
油絵初心者さんにはこの調合溶き油が
使いやすいのでおすすめです。
絵の具の乾燥を早める
クイックドライ溶き油もあります。
これらの溶き油には精油独特の臭いがあります。
人体に有害 というほどのことではありませんが
使っているときは、お部屋の換気をすることが必要です。
どうしても臭いが苦手…という方には
低臭タイプのオイルもあります。
有害な絵の具のこと
絵具に使っている顔料には、
身体に良くない有害なものがあります。
カドミウム、コバルト、鉛(シルバーホワイト)
などの重金属類の
名前が入った絵の具は注意が必要です。
絵の具のラベルに危険性の表記がありますので、
有害な色を使う時には、
肌に付かないように気を付けて使用しましょう。
指先の肌荒れなども注意してくださいね。
絵の具のラベルにはこんなマークがあります↓
購入するときの参考にしてください。
⇒ 有害
⇒ 安全
油絵の具の技法・描き方
ヤン·ファン·エイク「アルノルフィーニ夫妻像」1434年
油絵具の技法をいくつかご紹介します。
グレージング
グレージングとは、溶き油で薄めた油絵具を
何層も塗り重ねる技法です。
不透明な絵具の上に、透明な絵具を重ねると
下層の絵具が透けて見えてきます。
この効果によって、
絵に深みと透明感を出すことが出来ます。
グレージングは、透明な絵具を何層も重ねられる
油絵特有の技法といえます。
古典的な技法のひとつで、13世紀頃から
用いられてきました。
透層描き、グラッシ(仏語)とも呼ばれます。
↑この作品はグレージングを駆使して描かれています。
布のドレープと美しいグラデーションは
その効果によるものです。
カマイユ
カマイユとは、単色の濃淡で描く技法です。
殆どのカマイユは茶褐色で描かれ、
着彩する前の段階、
主に下層描きとしての役割を持ちます。
下描きの色は、モチーフの固有色
によって使い分けることもありますが、
茶褐色ならどんなモチーフの下描きにも
適当だといえます。
カマイユに使う色の例として
チタニウムホワイトと以下の絵の具です。
バーントシェンナ(赤みのある茶)
バーントアンバー(青みのある茶)
ローシェンナ(明るい茶)
イエローオーカー(黄色い茶)
グリザイユ
グリザイユは、カマイユが褐色の下地
で描くのに対して
灰色(モノトーン)で描く技法です。
つまり灰色の絵の具で
デッサンをすることです。
下描きの段階で、モチーフの形や陰影を
しっかり描いてから着彩すると、
リアルな立体表現ができるようになります。
グリザイユに適した色は
チタニウムホワイトと以下の絵の具を混ぜて
モノトーンを作ると良いです。
アイボリーブラック(赤みのある黒)
ピーチブラック(青みのある黒)
ペイニーズグレイ(黒っぽい青)
バーントアンバーとウルトラマリンを混ぜた黒に近い茶色
プリマ描き
キャンバスにいきなり色を乗せる技法です。
一発描きなどと言われます。
一度でどんどん絵の具を塗って行くので
厚く盛り上げたり(インパスト)、筆跡を残して
画面に躍動感を与えたりすることができます。
ゴッホやセザンヌなどの印象派の
画家たちが用いた技法です。
レオナルド·ダ·ヴィンチは、スフマートという技法で人物の肌や布の質感を描きました。スフマートとは色の境目がわからないように柔らか~くぼかす技法です。
スフマートで描かれたモナリザの肌には筆跡も輪郭線もないそうですよ~
この優れた技法を発明したダヴィンチはやっぱりすごい!
まとめ
油絵具は多様な表現ができる画材ですが、
乾きを待ってから次の工程に進む
ということがあるので
どうしても作業に時間がかかってしまいます。
けれども そんな油絵具の性質を知って
うまく扱えるようになれば
どんな絵も描くことが出来るようになります。
油絵の具は、作家の個性や感性を発揮するのに
最適な絵の具です。
納得の行くまで時間をかけられる分、
完成度の高い作品ができるはず。
ぜひ一歩踏み出して
油絵をはじめてみてください♪